2014.8.15発行/A5/48ページ/18禁
梶原千早さんとの合同サークル 「Halcyon Factory」 発行のキリアス本。にゃんぞーさん&たかつきさんがゲスト参加。
今回のテーマは 「アスナ攻めでエロ」 です。
収録作品: | 「新婚さん」 | にゃんぞー |
「目を閉じておいでよ」 | たかつき | |
「hush-hush」 | 梶原千早 | |
「理想的な新妻さん」 | 空音美樹 | |
フルカラー口絵入り |
(前略)
その後、散歩がてらにのんびり歩き、三十分かけて到着した《ウルネス》村だが、ここまでの道中は呆れるほどなんの障害もなかった。
「結婚したカップルへのお祝いってことかしらね」
「そんなところだろうな」
「さて、それじゃ行きましょうか」
わたしは意気揚々と教会入り口前の階段を駆け上がり、扉に手をかけた。だが横に立つキリト君が顔を背けているのに気付いて、手を止めて顔を覗き込んだ。
彼の顔には、笑いをかみ殺しているのがわかる奇妙な表情が浮かんでいた。
「なんなのかな、キリト君?」
「いやあ、アスナさんがやけに積極的なものですから」
わたしは自分の両頬が一気に火照るのを感じた。たぶん真っ赤になってしまってると思う。
「キ、キリト君だって乗り気だったじゃない。というか、そもそもの発端はキリト君のほうでしょ?」
「それはそうなんだけどさ。アスナがここまでノッてくれるとは思ってなかったから」
「だってしょうがないでしょ! わたしもきみもなにもかも初めてで、詳しい知識がないんだから!」
にやにやとイヤな笑い方のキリト君を、思いっきり睨みつけた。
昨日、わたしたちがアルゴさんから貰い受けた情報について簡潔に述べるなら、「セックス指南書を得るためのクエストに関して」である。
なにしろ現実世界でのわたしは、家庭でも学校でも学業優先が徹底した環境にいた。関心があるのは自分の成績と偏差値ばかりだったし、勉強以外は二の次三の次でしかなくて、もちろん性的な事柄を話すような相手もいなかった。だから知識は保険の授業で学んだ内容だけだったりする。
キリト君にしても、本人曰く「エロ本を見せてもらったことは何回かある」けど、「実際のやり方とか詳しく解説した本が回ってきたときは読まないまま次のヤツに回した」のだそうだ。「そんな時間あったらネトゲやってるほうがよかったから」なんだとか。それはそれでどうかと思うけど、という正直な個人的意見は置いておいて、とにかく彼も基本的なことしか知らないというわけだ。
そこでもたらされた指南書の存在は、若葉マーク付きの二人にはとてもありがたい情報だった。やっぱり、その、ええと、お互いがより気持ちよくなれたら、なんて思ってしまうわけですよ、新妻といたしましては。
「ごめんごめん。アスナの反応が可愛くて、ついからかいたくなるんだ」
「もう!」
キリト君は笑ったまま教会の扉を押し開けた。片手で扉を押さえながら、もう一方の手で中を示して、入るように促す仕草をする。わたしは顎を突き出して、澄ました表情を浮かべるように努め、怒っているふりをしつつ中に入る。
(後略)