2013.8.10発行/A5/48ページ/18禁
梶原千早さんとの合同サークル 「Halcyon Factory」 から発行のキリアス本。ゲストににゃんぞーさん参加。
今回のテーマは 「エロ」 です。『Light and Shadow』よりエロ度が上がりました。
収録作品: | 「マリッジ・ブルー」 | 空音美樹 |
「共有結合」 | にゃんぞー | |
「サンクチュアリ」 | 梶原千早 |
(前略)
二十一層では、旧アインクラッドでの知識をフルに活用した。フィールドも迷宮区も最短経路を最小限の戦闘で駆け抜け、先頭に立ってフロアボスに挑み、怒濤の勢いで倒してしまった。そのボスモンスターが四散して消え去るのももどかしく、二十二層へと向かった。
二十二層も、フィールドで立ち止まることなく、ひたすらこのログハウスを目指した。購入ウインドウのOKボタンをクリックしたときの安堵感は、涙となって両目に浮かんだほどだ。
その後は仲間たちと打ち上げをし、彼らが帰ったあとにキリトとユイと三人で祝杯をあげ、そして大泣きした。
それほどにこの家が欲しかった。
様々な記憶と感情が呼び起こされて、アスナは目が潤んでくるのを感じた。落ち着こうとして、ふうっと大きく深呼吸をした、そのとき──。
「アスナ?」
聞き慣れた柔らかな声音に、背後から呼びかけられた。アスナが振り返ると、開いたままのドアの脇に《影妖精族(スプリガン)》の少年が立っている。
「キリト君……。どうしたの?」
きょとんとした表情を浮かべていたキリトは、苦笑しながら近づいてきた。
「それはこっちのセリフ。アスナは今日から京都に行くんじゃなかった?」
「そうなんだけど、出かけるまで少し時間ができたから来ちゃった」
「そうか。……ところで寒くない?」
「言われてみれば」
アスナが物思いにふけっていたのは、思いの外長い時間だったらしい。外気温に影響されて身体がこわばっている。
寒さを感じるだけでなく、こんな細部まで作り込んでいるのだな。などと変なところに感心していると、気付けばキリトの両腕の中に抱え込まれていた。
「アバターだから風邪を引く心配がないのはいいけどさ」
体温もきちんとアバターに再現されているので、そのぬくもりが彼から伝わってくる。
「ほら、冷え切ってる」
「うん」
アスナは小さく返事をして、キリトの肩口に顔を埋めた。
(後略)